クラウドファンディングが中小企業にもたらす5つのプラス効果

中小企業がクラウドファンディングで得られる効果

経営者の悩みは今も昔も全く変わりません。

  • 売上不振
  • 人材不足・育成
  • 資金繰り

『2024年版 中小企業白書・小規模企業白書概要』によると、小規模事業者が重要と考える課題の上位がこちら。おそらく100年前の経営者の方も同じことで悩んでいたのは想像に難くありません。

参照元:https://www.meti.go.jp/press/2024/05/20240510002/20240510002-1.pdf

ただその課題を解決する手段としては、時代の流れとともに新しいものが生まれています。

クラウドファンディングもその一つ。

クラウドファンディングと聞くと、寄付やチャリティー、個人の活動支援をイメージする方が多いのですが、クラウドファンディングはNPOや個人だけのものではありません。

実際、私が以前クラウドファンディング業者に勤務していた時にも、経営にクラウドファンディングを取り入れ、効果をあげていた事業者の方を多く見てきました。また海外の記事等では、特にスタートアップで効果があるものとされ、その活用事例やノウハウが多く紹介されています。

また、意外に知られていないのですが、資金調達以外を主な目的としてクラウドファンディングを実施する事業者の方もいます。初期投資が少なく済むことも、経営資源が豊富でない中小企業にとっては大きなメリットです。

では、実際にはクラウドファンディングを活用することで、どのようなプラス効果が期待できるのでしょうか。

1. 事業資金の調達

クラウドファンディングと言えば「資金調達」というのが、一般的なイメージでしょう。金融機関や投資家といったプロではなく、名前も知らない一般の人達から、インターネットを通じて薄く広く資金を集めるのが、クラウドファンディングのそもそもの意味。「資金調達」が最も重要な機能であることは間違いありません。

クラウドファンディングは、購入型、融資型、出資型、寄付型など、いくつかのタイプに分けられます。この〇〇型の〇〇部分が、どういう形で資金調達をするかを、端的に表しています。

例えば融資型の場合、お金を受け取る代わりに、利息の支払いや元本返済の必要が生じます。購入型なら代わりに商品やサービスを提供します。

つまり行為自体は通常の借入や販売と全く変わりありません。

大きく違うのは資金を出す側の動機。

購入であれ、融資であれ、出資であれ、通常は資金を出す側からすれば、支払いに見合ったメリットが得られるか、つまりコストパフォーマンス、損得勘定でその可否が決まります。

そのため、価格競争力や知名度のある既存の大手が基本有利。実績や経営資源が少ない中小企業は、思うように資金調達がいかないというのが現実です。

ところが、クラウドファンディングの場合は、資金を提供する側の動機に「感情」が入ります。経済的合理性だけではなく、あなた自身やあなたのやろうとしていることに、魅力、共感、応援、同情等を抱いた一般の人が資金提供を行います。

そのため、あなたの思いをどれだけ伝えられるかが最重要とされ、基本的に他者との競争にはなりません。実績や経営体力のない中小企業でも、アイデアやストーリーで十分勝機(資金調達)が見込めます。

2. 広告とマーケティング

インターネットを通して幅広く資金調達を行うということは、まずは多くの人にあなたがその資金で何を計画しているかを知ってもらわなければいけません。クラウドファンディングのシステムには当然そのための機能が備わっています。賛同を得られるかは別として、クラウドファンディングの実施により、多くの人に認知してもらうということは可能です。これがクラウドファンディングのもたらす2つ目の効果、広告効果です。

どんなに素晴らしい商品・作品でも、まずは多くの人に知ってもらわなければ売れません。そして、モノを作る才能とモノを売る才能はまったくの別物です。ゴッホの絵が生前は1枚しか売れなかったのは有名な話。

金融畑が長かった私にすれば、モノをつくる才能がある人は本当に羨ましい。だから、開発に長けたメーカーやアーティストの方などには、その商品や作品を世に広めるためにクラウドファンディングへの活用を強く推奨します。

その理由は、コストをかけずにそれなりの効果が期待できること。

新商品やイベントを多くの人に知ってもらおうと思ったら、手っ取り早いのはテレビや紙媒体、インターネットなどのメディアへの広告出稿です。リーチ可能な人数では、クラウドファンディングとは比較になりません。ただ最大のネックはその費用。期待する効果に比例してとにかくお金がかかります。

費用をかけないということでは、SNSとプレスリリースの活用が思いつきます。

ただし他人に紹介してもらうには、それなりのニュース価値が必要。バズらせるのは本当に難しい。特に広告色の強い情報は基本相手にしてもらえません。

その点では、クラウドファンディング挑戦というのはネタになりやすい。何かに挑戦している姿は、人の興味を引きますし、ストーリーにしやすい。特に地域に密着したプロジェクトの場合、地方新聞や、地方放送局など、地域限定のメディアに取り上げてもらった例も多々あります。

SNSやプレスリリースでの拡散を考えた場合、直接的な商品紹介よりもクラウドファンディングを通じた商品紹介の方がうまくいくことが多いと思います。

プレ市場検証

クラウドファンディングの実施は、あなたの計画(プロジェクト)を多くの人に知ってもらうだけではありません。その方一人一人に対して、中身を知ってもらった上で資金提供するか否かを選択してもらうことになります。

多くの資金が集まれば、そのプロジェクトに魅力があり、それが新商品や新サービスだった場合、商品化すれば売れる可能性が高いと見立てることが可能です。

経営者のジレンマとして、

  • 企業の持続的な発展には、新商品や新サービスが必要
  • 社員からの企画・提案もあがってくる
  • ただ実行には初期投資が必要で、当然失敗するリスクもある
  • リスクは抑えたいので成功するなら実行したい
  • ところが成功するかどうかは、実際やってみなければわからない

このようなことで、新しいことに対してなかなか一歩が踏み出せないというケースに思い当たりませんか。社員とその家族の生活を預かる経営者としては、当然だと思います。

クラウドファンディングの実施により、まだデザインや試作品しかない段階でニーズがあるか否かが検証できることは、経営リスクの低減につながります。そこで多くのニーズがあることが証明された場合、その後の販路開拓や他の資金調達に活用することも可能です。

そして何より作り手にとっての大きな自信になります。クラウドファンディングの実施はテストマーケティングとしても大きな意味があるのです。

4. 顧客との関係構築

前述した「購入型クラウドファンディング」では、資金提供してくれた方(購入型では支援者と呼びます)と、継続的なコミュニケーションをとる機能が備わっています。その機会を利用し上手くコミュニケーションを取ることで、いわゆる「常連客」「ロイヤルカスタマー」にすることができます。

というのも、購入型クラウドファンディングでは、支援者側の意識として、単なる購入者というよりも、自分もプロジェクトに参加したという当事者意識を持つ方が多い。そのため、あなたからの情報提供には、通常のアフターフォローに比べて関心が高い。

この当事者意識は本当に大事です。

最近のアイドルグループで、オーディションからデビューまでの期間を公開し、ファンがその期間に関わることができるグループが結構ありますよね。私の周りにも熱狂的なファンがいますが、彼らのファンは一方的に与えられた従来のアイドルと違って、その成長を見守ってきたという当事者意識が強い。

そのため、テレビ出演等がなく全国的な知名度が低くても、少数でつながりが強いファンに支えられ、息の長い活動が可能。全国的な居酒屋チェーンは店の入れ替わりが激しいが、常連客のいる地元密着型のスナックは息が長いのと同じ理屈。これはこれで立派な成功です。

中小事業者にとっても規模の拡大が全てではありません。専門性を磨き、より絞り込んだターゲットを対象に、尖った企業を目指すのは立派なビジネスモデルです。むしろそれが中小事業者の王道。そして少数でもロイヤルな顧客を築いていくには、むしろ通常の商行為よりも、クラウドファンディングの支援者の方が、むしろ得意領域であると言えます。

先ほどのスナックの例もありますが、特に飲食店を開業するという場合、開業資金を集めることも重要ですが、それ以上に何度も来店してくれる常連客をどれだけ作れるかが店の成否を決めます。飲食店の開業に購入型クラウドファンディングが利用されるケースが多いのも、そういった理由からです。

5. 社内活性化

中小企業診断士として経営者の方とお話しするようになって、個人的に意外だったのは、人の面で悩みをかかえている方が非常に多かったこと。中でも、

  • 人が足りない(採用・定着率問題)
  • 社内に活気がない(モチベーション問題)
  • 人が育たない(社員育成問題)

というような悩みは、ほとんどの企業が何かしら抱えています。

新たな人材の確保が難しい場合、会社の将来は経営者も含めた今いる人のパフォーマンス、成長に全て掛かっています。そのため、期待と共に何か物足りない、と感じている経営者の方が多いのではないでしょうか。

結論から言うと、クラウドファンディングへの挑戦で、社内が盛り上がるというのは珍しくありません。資金調達では期待通りとはいかなくとも、その副産物として社内に活気が出たので、やってよかったという言葉を頂いたこともあります。 

ただし社内が盛り上がるのは、準備期間を含めクラウドファンディングを実施している期間だけというケースは多いようです。長期的、永続的な効果はあまり期待できませんかもしれません。

とはいえ、変化のきっかけにするには十分です。初期投資も必要なく、先の4つの副産物も期待できるとあれば、人事面でのクラウドファンディング実施も有りではないでしょうか。

まとめ

以上がクラウドファンディングの実行で期待できる主だったプラス効果です。

実際、私も経営者の方のお悩みを伺った際、クラウドファンディングで改善が期待できると思うケースは少なくありません。

その際、よく聞かれることとして、

  • ITのことはよくわからない
  • 費用はどれくらい

ということを気にされる方が多い。

まず、ITの知識・スキルに関してはご安心ください。クラウドファンディングの取扱業者のシステムを利用し、当然サポートもしてもらえますので、専門知識はあるに越したことはない程度。どなたでも実行可能です。

次に費用面ですが、確実に発生するのは、業者への手数料。ただし初期費用といった固定費の形ではなく、調達した資金の何%といった成功報酬的なケースがほとんど。なので、資金は調達できず業者手数料だけかかったという事は避けられます。

ただし、実際実行に必要な手続きや費用については、クラウドファンディングの種類によって違います。また当記事で紹介した5つの効果のいくつかは、すべてのクラウドファンディングの種類で得られるものではありません。ですから、もし当記事を読まれてクラウドファンディングに興味を持たれた方は、次のステップとして自身に合ったクラウドファンディングの種類について学ばれてはいかがでしょうか?

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