「クラウドファンディングで成功する秘訣は何ですか?」
と尋ねられたら、おそらく多くの人が「スタートダッシュ」を指摘するのではないでしょうか。ここでの「スタートダッシュ」とは「キャンペーン開始間もない時期にできるだけ多くの支援を集める」ということを意味します。マラソンで例えるなら、最初の5kmに全力を尽くす感じ。ペース配分など考えず、初日で目標を達成するくらいの気持ちの方が上手くいくとされています。
スタートが大事な理由~早期の実績があなたの信用となる
クラウドファンディングでは、一度も面識がない人からも資金調達することができます。それがクラウドファンディングのメリットでもあるのですが、それには『他人』という大きな壁が立ちふさがります。あなたが計画しているプロジェクトに興味があったとしても、全く見ず知らずのあなたに資金を提供してもいいと思う人は、実際にはそう多くありません。というのも、たった数分前にあなたのことを知ったばかりで、信用に値する相手なのか判断がつかないからです。
そのため、キャンペーンページには、あなたのことを信用してもらうための様々な情報を掲載します。例えば、
- あなたの経歴
- プロジェクトに対する思い
- 資金の使い道
- 実行スケジュール
など。ページを訪れた人はそれらの情報から、あなたを信用して支援するか否かを判断するわけです。
さて、キャンペーンページの中で特に信用を得るのに効果がある情報って何だと思いますか?それは当該キャンペーンであなたが築いている実績。具体的には、ページ上部の目立つところに必ず掲載される「現在の支援総額、支援者数、達成率」の数字です。
ネット通販サイトや飲食店比較サイトでは、当事者が発信している情報より、第三者のコメントや採点を参考にするのが今や当たり前。クラウドファンディングの世界も例外ではありません。
また人間は多くの人が指示しているものに自分も乗りたくなる習性を持っています。そのため、あなたを支援する人が増えれば増えるほど、つまり実績値が上がるほど、新たな支援が得やすくなるというわけです。
反対に、支援者が一人もいないキャンペーンでは、プロジェクトの内容に興味があっても、自分が支援者第一号になるのはなかなか抵抗があるものです。昼時なのに誰もいない料理店に入りづらいのと同じ感覚ですね。さらにこのマイナスの効果は、キャンペーン開始から時間が経つほど大きくなります。
つまり、今の実績値(支援金額または達成率)が、新たな支援の申込率に影響を与えるのです。そのためスタート時にある程度の実績をあげられるか否かが、その後のキャンペーン全体のパフォーマンスを大きく左右します。この底上げの影響力は本当に馬鹿にならず、多くの人が「スタートダッシュ」を重要視している理由となっています。
「1週間で30%達成」で成功の確率が上がる
では、どれくらいの実績なら、訪問された方に安心して支援してもらえるのでしょうか?
海外のクラウドファンディングに関する書籍やブログなどでは、
「開始1週間で30%以上の資金を得たキャンペーンは成功する可能性が高い」
このようなフレーズをよく見かけます。この数字はもちろん人間心理がどうこうという話ではありません。あくまでも、クラウドファンディング業者が公表している過去のキャンペーンの実績から統計を取ったものです。ただ、私たちが参考にするには、過去の裏付けだけでも十分です。
クラウドファンディングを行おうとしている者としては、初日で100%目標を達成してしまうのが理想です。実際そういうプロジェクトも見かけます。ただ世の中そううまくはいきません。
そのため私たちがキャンペーンを計画する際には、最終的な目標金額とともに、達成度合いの進捗を測るために、途中での経過目標も設定する必要があります。いわゆるKPI(Key Performance Indicator)というものですね。
現実的な目標として、先の「期間として1週間、その間に目標金額の30%達成」というのは悪くなく、私もよく使わせてもらっています。その理由としては、
キャンペーンは開始直後が最も訪問される
下図は、私が以前関わったキャンペーンページのアクセス数の推移です。
基本的には、
- 開始直後(2〜5日)のアクセスが最も多く
- その後減少し
- 最後にやや盛り返す
広告出稿や、メディア紹介による単発的に急増するといった場合を除けば、ほぼ例外なくこのような推移となります。
ですので、最初の繁忙期を過ぎた1週間後を定点観測地点にするのは理にかなっています。
国内のクラウドファンディングでの検証
さて、目標は30%で適当か問題ですが、実際にそれで成功したキャンペーンが多いわけですから、それに異を唱える理由はありません。あくまで目標ですから、それほど厳密にする必要もありませんし。
ただ今回当記事を書くにあたって実際に調べてみようと思い立ち、検証してみました。以下がその結果になります。
・検証したキャンペーン
プラットフォーム:CAMNPFIRE、Makuake、READYFOR
期間:2024年1月~2024年3月
対象:目標金額100万円以上
標本件数:2,000件を無作為に抽出
成功条件:目標額を達成したものを成功として定義
・検証結果
- 対象とした2,000件のキャンペーンの全体の成功率は31.3%
- 一週間以内に目標金額の30%を達成したキャンペーンは23.9%
- Bの成功率は88.5%
標本とした2,000件全体の成功率が31.3%だったのに対し(A)、“一週間以内に目標金額の30%を達成したキャンペーン”の成功率は88.5%という結果でした。ただその条件をクリアできたキャンペーンが、全体の20%前半というのは、想像していたより厳しいなという感想です。
もちろんこれらは過去の結果であって、未来を保証するものではありません。ただ成功率88.5%であれば、「成功する可能性が高い」と言っていいレベルであり、私たちが目標とするには十分だと思います。なので、あなたもまずは最初の一週間で30%の達成を目標としてはどうでしょうか。
最初のターゲットは「知人・関係者」が鉄則
さて、クラウドファンディング成功の秘訣が、スタートダッシュだとして、肝心なのは「そのために何をすべきか?」「他の人はどうしているのか?」です。
そこで重要なのは、決してターゲットを間違わないこと。
下図はあなたの支援者を、あなたとの関係、計画への関心度合いで4つのグループに分けたもの。あなたを支援してくれる人はこのいずれかに入ります。
この中でC、Dのグループの方は、ページを訪れるまではあなたの事を全く知らなかった人たち。先にも書きましたが、この方々から支援を得るには、ある程度の実績(支援額)が必要です。ですから、ある程度の実績を積むまでは、この方たちからの支援はあまり期待できません。
ではどうするか? 当然、A、Bがターゲットになるのは必然です。この人たちは、あなたの家族、友人、知人、取引先、会社の社員、SNSのフォロワーなど、すでにあなたもしくはあなたの会社が過去に関係を築いてきた人達。すでにあなたやあなたの会社のことをご存じの方々です。
この方々に、メール、電話、または直接会って、あなたがクラウドファンディングを実施しようとしていること、そして可能ならば活動に協力してもらえないかということを伝えるのです。
「それじゃ昔ながらの営業や依頼行為と変わらないじゃないか」と思うかもしれません。その通りです。この段階では、今まで築いてきたリアルな世界での人間関係を活用し、「義理と人情」を最大の拠り所とします(他にも販促活動はおこないますが、大事な点なので強調するような書き方をしています)。
ただ、通常の営業や融資・出資依頼と違うところは、これがクラウドファンディング挑戦に対する協力のお願いだというところ。交渉というよりは、世間話する際の一つのネタ程度の軽さでできます。またお金のやり取りが当人同士ではなく、クラウドファンディング業者を通して行えるのも、両者にとって重い話にならないところ。チラシを渡す、又はURLを教えるだけで、直前にリマインドメールを送るだけでもいいと思います。
ポイントは、キャンペーンの開始日までにこれを入念に行ってくこと。このようにしてキャンペーン開始と同時に支援が集まるよう仕向けるのです。
海外のブログでは、「知人から目標金額の30%の支援が集まると確信できるまでは、キャンペーンをスタートしてはならない」というのを見かけたこともあります。これは極端ではありますが、キャンペーン開始直後の重要性を物語っています。
まとめ
以上、クラウドファングで成功する秘訣として、「スタートダッシュ」及び、これまでの人間関係を活用することの重要性を取り上げました。クラウドファンディングというと、ITを使った今どきの資金調達方法と思っていた方は、随分と泥臭いイメージを持たれたかもしれません。
ただ私もクラウドファンディングのお手伝いをしてきた中で、
- 1対1の地道な依頼ができる人
- 顔が広く依頼できる先をたくさん保有している人
このような人は、成功する確率がかなり高いことを実感しています。
最後にたまに訊かれるのですが、「ある程度達成率を上げるため、自己資金を使ったらどうか」という意見があります。確かにマーケティング目的の大手企業などが、(広告費の感覚で)そういう手法を使うこともあるらしいです。ただし経営資源が潤沢ではない中小事業者の方にはおススメしません。
クラウドファンディングで得た支援金は、全てあなたが手にすることは出来ません。実際は支援金額の15〜20%が手数料、残りは基本、売上に計上され、利益が出れば税金が掛かります。そして一番の理由は、仮にそこまでしたとして、多くの支援者が必ず付いてくるという保証がないことです。
「初期投資を極力押さえ、普段ならできないこと(事業)をテストできる」のが、事業者向けクラウドファンディングのメリットです。これでは、手段が目的化してしまっています。
あなたのクラウドファンディング挑戦の目的が、新規事業の立ち上げであれ、現状からの脱却であれ、過去関係を築いてきた方たちとの再コミュニケーションは、新たな展開へのきっかけになるかもしれません。
クラウドファンディングへの支援依頼にとどまらず、あなたの事業にプラスになることでしょう。
ただ泥臭いのは初めのうち。その事前努力の甲斐あって、スタートダッシュに成功したならば、それ以降は幅広いターゲットに向け、ネット(SNSや広告)を使った、スマートな活動に変化させていくことになります。詳細については、別の投稿を参照いただければ幸いです。
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