クラウドファンディングに挑戦する前に、知っておくべきこと

「こんなはずじゃなかった!」とならないために

「どうですか、うまくいくと思いますか?」

「購入型」クラウドファンディングでの資金調達のサポートをさせて頂いておりますと、プロジェクトの内容や目標を伺った後に、このような感想を聞かれることがあります。

皆さん勝算や期待があってのクラウドファンディング挑戦ですから、その思いに水を差すようなことはもちろん申しません。ただし販売という形であれ、見ず知らずの人からお金を頂戴しようとするわけですから、思惑通りにいかないことはたくさん出てきます。ですから、後から「こんなはずじゃなかった」とならないよう、事前に以下のような心構えだけは持っておいた方がよいでしょう。

始めるのは簡単、ただ結果を出すのは容易ではない

クラウドファンディングの成功者はどれくらいだと思いますか?

大手クラウドファンディングサービス CAMPFIRE の統計データ(2019.01~2023.09)によると、約4~6割の人が自身の目標とする資金の調達に成功しているようです。ただ目標金額は人それぞれなので、一人当たりどれ位の金額を集めているかというのは、これだけだと分かりません。

そこで、上の図表は、私が独自で集計しているデータを元にしたものです。公式なものではなく、1ヵ月間だけのデータですが、概要をつかむには支障ないと思いますので、参考にしてください。

この結果をザックリと分類すると、

  • Aグループ ‥ 1,000万円以上(1%未満)
  • Bグループ ‥ 数百万円(10~20%)
  • Cグループ ‥ 100万円未満(80%超)

「意外と少ないな」と思われるかもしれませんが、これは目標金額をあえて低く設定している人が多く(低くするメリットがあるため)、その低い目標に結果(支援金額)が収れんしてしてしまったという理由もあります。

とは言うものの、やはりBとCの間には越えなければいけない壁があり、いかにしてBC間の壁を超えるかということがプロジェクトを進める上で思案のしどころとなります。開業資金や商品開発資金ですとそれなりの金額が必要となりますし、そうでなくても調達額は多いことに越したことはありませんから。

なおAグループに関しては、すでに多くのファンがいるといった前提がないと厳しいので、購入型クラウドファンディングでは通常は狙いにいきません。もし数千万円規模の資金を必要としているのでしたら、購入型だけで調達するのはまず不可能。購入型以外のクラウドファンディング、または他の資金調達手段も検討してください。その場合、購入型を資金の一部足しに利用するという考えが効果的かつ現実的です。

ちなみに今回の集計で最も資金を集めたプロジェクトは以下のもので1億4千万円ほど集めています。

集客は自分で行うもの

ではBグループを目指すうえで一番力を入れるべきは何でしょう?

と、その前に、私が普段プロジェクトを進める際に使っているクラウドファンディングの成果モデルを紹介させてください。このモデルを使うことで、成果を出すために必要なことをシンプルに捉えることができるようになります。

クラウドファンディングの成果 = ( 価値 + 共感 + デザイン )× 信用² × 集客

結論から申しますと、この中で(Bグループを目指すうえで)最も注力すべきは「集客」です。購入型クラウドファンディングでは、業者のサイトに自身のプロジェクトの告知ページを掲載し、そこを訪れた方から支援を募ります。よって、ここでいう「集客」とは自身のページへの訪問者を増やすための活動を指します。

ところで上の計算式上では「信用」が最も重要な要素となっていますが、あえて「集客」を注力すべしとしたのは、「集客」の場合、行動が短期間で成果に繋がるからです。支援を得る上で「信用」は本当に重要です。ただ「信用」は思い通りにコントロールできません。その点、集客に力を入れ、訪問者が2倍になれば、2倍の支援を期待できます。

さて、重要なのはここからです。

「有名クラウドファンディングサイトに掲載されれば多くの人の目に触れられる」と期待される方が多いのですが、大手サイトには常時1,000~2,000近くのプロジェクトが稼働しています。まず、①掲載しただけではほとんど見つけてもらえません。加えて、②偶然訪問した人がいたとしても、支援者としてはほぼ期待できません。(自身の活動を知ってもらう意味で訪問自体は大歓迎です)。プロジェクト前~開始初期の期間は、この認識でいることが成功するために非常に重要です。

ではどうするか?自分で集客するしかありません。しかも特に大事なのは、支援を期待できる人を集客すること。集客方法には様々なものがあります。自身で可能だと思った方法は全て実行する心構えでいましょう。ここをおろそかにして成功したプロジェクトは一つもないはずです。

クラウドファンディングは、ツールの一つでしかない

さて、プロジェクト公開までに全てやれることをやりきり、最善手を打ったと思えるプロジェクトであっても、残念ながら目標に達しないケースは当然あります

この目標資金を調達できるか否かが不確実なところが、クラウドファンディングの大きなデメリット。クラウドファンディングによる調達資金をアイデア実現のための主力資金にと考えている方に対しては(もちろんこの様なタイプの方が多いのですが)、うまくいかなかった時はプロジェクトを修正して再チャレンジするなどの、バックアッププランを作っておきましょう。といった提案をしています。今回の挑戦を決して無駄にしないために。

私はこのような失敗することを前提とした思考が(『プラスの失敗思考』)、物事をやり遂げるのには非常に大事だと思っています。結局、成功する人のほとんどが、失敗しない人ではなくて、無数の失敗をカバーできた人ですから。

そういう意味では、自己資金や出資・借入での活動を計画している人が、その「予備費の調達」 や「金利負担の軽減」等の目的でクラウドファンディングを利用するのは、本当に理想的なクラウドファンディングの利用法と言えます。

また、資金調達以外のクラウドファンディングの利用法として、クラウドファンディングの告知(広告)効果に興味を示す方も多いです。実際、大手企業もクラウドファンディングを利用していますが、目的として多いのは「大量生産前のテストマーケティング」は告知及びマーケティングです。

私の勝手な憶測にはなりますが、通常(例えばキャンペーン)の広告と比較した場合、クラウドファンディング挑戦の告知の方が、クリック率やバズる確率、いわゆる拡散率が高いような気がします。「挑戦(チャレンジ)」って多くの人に興味を抱かせるキーワードですから。しかも広告費を支払うのではなく、売り上げが立ち、売上金(厳密には前受金)のキャッシュフローを生むわけです。

以上、取り留めない話になってしまいましたが、大事なのは「目標はあなたのアイデアを実現することで、クラウドファンディングはそのための単なるツールの一つ。」という意識を持つこと。こう考えられる人が、結果的にクラウドファンディングでも成功しているような気がします。

コメント